「笑う門には福来る」は本当だった!笑いがもたらす健康と、活力の源のヒミツ
笑う門には福来る」とは、脳の仕組みと役割などにかなったよくできた諺です。
私たちも日々の生活において、「笑い」の時間も取り入れて、習慣化してみてはいかがでしょうか。きっと、健康と活力の源として働くことでしょう。
「笑う」ということと、脳の関係や「笑う」ことによるさまざまな効果について考えてみましょう。
脳と心の関係
人間の心の中をそのまま表しているのが、私たちの顔と考えられています。顔は、その人の生活や人生、あるいは健康状態などを映しています。
アメリカのポール・D・マクリーン博士が提唱した脳の三重構造があります。
一番古く、生命を司るところが爬虫類脳とも呼ばれている脳幹です。そして、この脳幹を覆うように、私たち人間や動物の共通の感情でもある情動や本能を司る、哺乳類脳の大脳辺縁系です。快さ、不愉快、怒り、恐れといった四つの原始的感情のことを情動といいます。
大脳辺縁系は、本能、情動の座ともいわれ、大脳辺縁系が心と体のつなぎ目で、ここのひずみが心身症になると考えられています。
一番外側の大脳新皮質は、生まれてすぐは未発達で、生まれた後の教育や環境がここの発達を促します。
ところで、エンゼル・スマイル、天使の微笑みといわれる赤ちゃんの笑いや、心の底から笑っている人の顔は左右対称の表情といわれています。
一方で、顔で笑って心で泣いてといった複雑な表情である苦笑いや、冷やかし笑い、ふくみ笑いといったものは、どれも左右非対称の表情といわれています。
赤ちゃんが見せるエンゼル・スマイルとは、新皮質がまだ発達していないので、快いと感じたままが表情に出て周りを明るくしてくれるものです。
表情と脳の関係
脳幹だけで生きているのが、ヘビに代表される爬虫類、旧皮質と脳幹両方を持っているのがイヌやネコなどの哺乳類、そして、霊長類である私たち人間やサルは、さらに大脳新皮質を持っています。
イヌやサルでは、顔の表情をつくる表情筋が一定方向であり、毛に覆われているため、顔の表情を読み取ることは難しいものです。サルは目や口の周りの表情筋は発達しているといわれていますが、顔は毛が多くあるために、人に比べて表情の表現に限界があります。
このようなことから考えても、私たち人間の表情筋はよく発達し、毛がないため、心が顔に現れてもわかりやすいのです。
オオカミに育てられた子供の話は有名ですが、その子供は、人の顔を見て微笑むことがなかったために、笑うという人間らしいしぐさの一つができなかったといわれています。
使えば発達する、使わなければ退化するのが筋肉です。オオカミに育てられた子供の例は極端ですが、表情筋も同様に使わなければ退化してしまうのです。
そして、笑うという行為でポイントとなるのは、顔の中でも目と口元になります。目は脳の新皮質が、そして、口元は、大脳辺縁系がコントロールしています。
「嵐も吹けば、雨も降る。陸上の変転きわまりない環境の中で、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、たくましく生活を営むために発達したのが、陸上の脊椎動物の前脳である」
とは、東京大学名誉教授で、医学博士の時(とき)実(ざね)利彦(としひこ)氏の言葉です。
この前脳とは、大脳辺縁系も指しており、この脳による運動や感覚が本能的な行動に直接関わっています。そして、本能、情動の座ともいえる、この大脳辺縁系は、大脳新皮質からの指令によってコントロールされます。(『脳をきたえれば人生はうまくいく』(大島清著/東京書籍より抜粋)
また、『「自分の壁」を破るいちばん簡単な方法』(スーザン ターケル 著, ラリー ターケル 著)には、次のように書かれています。
微笑む気分でない時でも微笑む。笑顔をつくることによって、脳の中の肯定的な感情をつくる部分が反応し、活性化される。
落ち込んだ時に元気を出したい場合やふだんの生活を今より愉快にしたいなら、ともかくもっと微笑むこと。テレビや劇場でコメディーやコントを見たり、ジョークの本やユーモア小説を読んだりする。ユーモアセンスあふれる人と友達になって一緒sに過ごす。人生にもっと幸せがほしいなら、もっと微笑むこと。自分の微笑みを改良するには、微笑みに使う筋肉を鍛え、目を使って微笑むように気をつける。楽しく感じていいときなのに、気分が陰鬱なときには、無理矢理でも笑顔をつくってみよう。
自分のことを幸せではないと思っている人は、一日に笑顔の回数が五回にも満たないといわれ、一方で、小さな子供達は、一日に400回以上笑うともいわれています。
いつも笑顔でいる小さな子供たちは、大人の私たちは見ているだけで、幸せな気分にもなれるものです。笑顔には他人にも影響を与えることのできるすばらしいパワーが秘められています。
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参考文献
『笑顔がクスリ』(昇 幹夫著/保険同人社)