これってHSC!?繊細すぎる子供の特性を生かした育児をしよう!

こんにちは!しちだ・教育研究所です。
突然ですが、「HSC」という言葉を聞いたことがありますか?
「初めて聞いた」という方も、「うちの子、HSCかも」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ぜひ、こちらの記事を読んでいただき、HSCに対する理解を深めて、HSCの子供が心地よく生活できる社会を作っていきましょう。

目次
1、HSCとは?
2、4つの特徴!いくつ当てはまる?
3、HSCかどうかを知るための、23のチェックリスト
4、実はこんなに違う!4つのタイプに分けられるHSC
5、HSCの子供にはどんなことに気をつけるとよい?
6、HSCをポジティブに!素敵な才能として伸ばしていこう

HSCとは

1、HSCとは?

「HSC」とは、「Highly Sensitive Child」の略で、生まれつき、敏感で繊細、感受性が高い気質を持つ子供のことをいいます。障害や疾患ではなく、その人の生まれつきの特性・気質です。
今から約20年前に、アメリカの心理学者エレイン=アーロン博士が名づけた概念です。
アーロン博士は、息子が敏感な気質で、苦労をした経験から、研究を重ねて、本を出版しました。アメリカで出版された本は、大ベストセラーになり、日本では『ささいなことにでもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』というタイトルで2000年に刊行され、日本でも知られるようになりました。
HSCは、子供の15~20%という一定の割合でいるといわれます。5人中1人ということですから、意外とたくさんいると感じる方が多いのではないでしょうか。
しかし、5人の中に1人いる割には、HSCへの理解は進んでいません。

小学生悩み

2、4つの特徴!いくつ当てはまる?

HSCには、以下の4つの性質「DOES」があるといわれます。
D:深く考える(Depth of processing)
O:過剰に刺激を受けやすい(being easily Overstimulated
E:共感力が高く、感情の反応が強い(being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular)
S:些細な刺激を察知する(being aware of Subtle Stimuli)

人一倍敏感な子供には、この4つが必ず当てはまります。
4つの性質について、理解を深めていきましょう。

①深く考える
小さな情報から、瞬時にたくさんのことを感じ取ることができます。
周囲の様子や人間の感情など、一早く察することができるので、一歩深く考えてしまいます。思考が深いからこそ、物事に対して慎重になるため、動作も遅れがちです。
あらゆる可能性を考えるので、選択に時間がかかったり、物事の動作がゆっくりだったりします。

②過剰に刺激を受けやすい
小さな刺激に対して、過剰に反応してしまいがちです。音・匂い・温度や風の変化など、ちょっとした変化を大きく受け止めてしまいます。騒がしい場所が苦手だったり、痛みなどに弱かったりする様子が見られます。
楽しい旅行などでも、すぐ疲れてしまったり、発表会や運動会など、人に見られると必要以上に緊張してしまいがちです。
日常生活を送るだけでも、刺激が多く、疲れを感じやすい傾向にあります。

③共感力が高く、感情の反応が強い
他人の感情を敏感に察してしまい、他人の喜怒哀楽の変化に強く反応します。人の心を読むことに長けていて、人の気持ちが手に取るようにわかります。
最近の脳科学の研究で、HSCの子供は、ミラーニューロンの活動が活発であることがわかりました。(ミラーニューロンとは、他の人が何かをしたり、感じたりしているのを見ると発火して、自分が同じことをしたり感じたりしているように感じる神経細胞です。)
それが、HSCの共感力の高さにつながっているといわれています。

④些細な刺激を察知する
直感力や共感力に優れているため、小さなことにもすぐ気づいてしまいます。
周囲の人のファッションやヘアスタイルなどの微妙な変化や物の配置の変化などに、いち早く気づきます。
他人のちょっとした感情の変化にも敏感で、自分がどう思われているか、気にしてしまいがちです。
少しの刺激が体調にも表れ、頭痛や腹痛などを起こしやすくなります。

何に対して敏感かは、人によってそれぞれ違います。人の気持ちに敏感な子供もいれば、周囲の環境の変化に敏感な子供もいます。「敏感」の感じ方は、千差万別なのです。

生きていく環境の中で、敏感さを感じにくくなる場合もありますが、大人になっても、敏感な性質は変わらないといわれます。
大人の敏感な人をHSP(Highly Sensitive Person)と言います。

♦HSCと発達障害の違いは?
発達障害の子供は、音に敏感という特徴を持つので、同じく音に敏感なHSCも発達障害なのでは?という意見もありますが、HSCは、病気ではありません。
また、HSCと発達障害には、「他人の気持ちが理解できるかどうか」というところに、決定的な違いがあります。基本的に、発達障害の子供は他人の気持ちが理解できず、人間関係の構築に苦労するという特徴を持ちますが、HSCは逆に他人の気持ちを敏感に読み取ることができます。
HSCは環境によって作られるものではなく、生まれ持っての気質なので、治す必要がありません。周囲の人が理解を深め、適切な接し方をしていくことが大切です。
しかし、HSCの子供の中には、発達障害と誤解されてしまう場合もあったり、発達障害の子供がHSCの気質を持っている場合もあります。

チェックリスト

3、HSCかどうかを知るための、23のチェックリスト

HSCかどうかを知るために、23のチェックリストがあります。子供について、どちらかといえば当てはまる場合、過去に多く当てはまっていた場合には、「はい」。全く当てはまらないか、ほぼ当てはまらない場合には、「いいえ」と答えてください。

1.すぐにびっくりする
2.服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
3.驚かされるのが苦手である
4.しつけは、強い罰よりも、優しい注意のほうが効果がある
5.親の心を読む
6.年齢の割りに難しい言葉を使う
7.いつもと違うにおいに気づく
8.ユーモアのセンスがある
9.直感力に優れている
10.興奮したあとはなかなか寝つけない
11.大きな変化にうまく適応できない
12.たくさんのことを質問する
13.服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる
14.完璧主義である
15.誰かがつらい思いをしていることに気づく
16.静かに遊ぶのを好む
17.考えさせられる深い質問をする
18.痛みに敏感である
19.うるさい場所を嫌がる
20.細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく
21.石橋をたたいて渡る
22.人前で発表するときには、知っている人だけのほうがうまくいく
23.物事を深く考える

得点評価
13個以上「はい」なら、お子さんはおそらくHSCでしょう。しかし、チェックリストよりも、子供を観察する親の感覚のほうが正確です。たとえ「はい」が1つか2つでも、その度合いが極端に強ければ、お子さんはHSCの可能性があります。

分類分け

4、実はこんなに違う!4つのタイプに分けられるHSC

HSCは、大きく「HSC」「HSE」「HSS型HSC」「HSS型HSE」の4つのタイプに分けられます。

① 内向的な「HSC」
HSCの中で最も数が多く典型的なのは、内向的な「HSC」です。
内向的で、大人しく、静かな生活を好みます。衝動的なことはせず、危険なことを冒さず、物事をコツコツと自分のペースで継続していけることがHSCの強みです。
人間関係を構築することが苦手で、相手の気持ちを考えすぎて、疲れやすくなることがあります。

② 外向的な「HSE」
HSE(外向型HSC)は、「Highly Sensitive Extrovert」の略で、繊細ながら外向的な一面を持つタイプです。
HSC(敏感で繊細な子)=慎重で、大人しくて、落ち着いている内向的なタイプを想像するかもしれません。しかし、HSCの中で、約30%が、外向的といわれます。
社交的で、人と関わることも好きですが、繊細で、人の言動や行動に疲れてしまうこともあるので、人との距離感を大切にします。

③ HSS型HSC
HSSは、High Sensation Seekingの頭文字をとった略称で、日本語では「刺激探求型」と言います。
HSS型HSCは、HSCの約6%ほどしかいない珍しい気質です。好奇心が旺盛で、初めての場所を好んだり、新しいお店ができたらすぐに行ってみたり…と、新しい刺激を楽しむタイプですが、外向的ではありません。
ただし、刺激に疲れてしまうこともあるので、一人でゆっくり休む時間も必要なタイプです。

④ HSS型HSE
HSS型HSEは、外向的で刺激を求める気質を持っています。大半のHSEはHSS(刺激探求型)の可能性が高いといわれています。
HSCの中で最も活発で、リーダーシップが取れるのも特徴です。内向的なHSCよりも落ち込みにくいですが、ひとりの時間がないとストレスを抱えます。

●親がHSPでない場合
親がHSPでない場合には、子供の様子を理解できない、共感できないことがあります。
HSCをこじらせてしまう子供は、親がHSPでない場合が多いといわれます。親がHSPであれば、子供の気持ちがわかり、共感しやすいものです。しかし、気持ちをわかってもらえなかったり、支配されてしまったりして、子供はさらに内に閉じこもってしまうことがあります。
もし、我が子がHSCかもと思ったとき、まず、親はHSCについての理解を深めることが大切です。
本で学んだり、学校のカウンセラーに相談したりすることをおすすめします。近くにいるHSPの人を探して、様子を見たり、話を聞いてみたりするとよいでしょう。なるべくHSPの感じ方を意識することで、少しずつHSPやHSCの様子がわかるようになってきます。
HSCの子供を持つことで、親も気苦労や悩んだりすることも増えますが、HSCの理解を深めて、子供を信じて、そのままを受け入れていきましょう。

家族ピクニック

5、HSCの子供にはどんなことに気をつけるとよい?

① 子供のペースを大切にする
HSCは、敏感で、物事に対して慎重です。大人のペースに比べると遅く感じることもありますが、周りと比べずに、本人のペースを大切に、ゆっくりでも見守る姿勢を大切にしましょう。自分のペースを大切にしてもらえることで、子供も落ち着いて行動ができたり、物事に取り組めたりするものです。

② 過保護・過干渉に気をつける

HSCの親は、子供の様子が気になったり、心配になったりして、つい過保護になりがちです。
また、心配し過ぎて、指示ばかり出していたりすると、子供は、親の言う通りにすれば、親が喜んでくれると思ってしまいます。HSCは、人の気持ちがよくわかるので、親の顔色を見て、過ごすようになることもあります。
とにかく、干渉のし過ぎ・口の出し過ぎは、厳禁です。指示されないと何もできない子になったり、無理にさせるとトラウマが残ってしまうこともあります。

③ 共感する
人と比べて、敏感だったり、慎重だったりすることで、周りから理解されにくく、迷惑をかけたり、人を苛立たせたりすることもあります。
HSCは、周りの空気を読む力にも長けているので、自分のせいで相手をイライラさせているというのを敏感に察知します。外で傷つくことも多いので、親は子供の味方になることが大切です。
「傷ついたよね。悲しかったね」「怖かったよね」などと、共感することが大切です。
また、小さな子供の場合、自分がどんなふうに傷ついたり、不安に感じていたりするかを言葉にすることが難しいことがあります。子供の言葉を代弁することで、子供も心が落ち着き、安心します。

④ 強く叱らない
HSCは、自己肯定感が低くなる傾向があり、少し注意されるだけで、ひどく傷つくことがあります。子供と目の高さを同じにして説明するだけで、十分伝わります。
また、HSCは、自分が注意されるときだけでなく、きょうだいや夫婦間などで、誰かが叱られていることを聞くだけでも、自分が注意をされたように、傷つくことがあります。
子供自身だけでなく、家族間でも大きな声で喧嘩したり注意したりせずに、落ち着いた声で話すようにしましょう。

⑤ 子供が落ち着く環境を作る
子供は、園や学校などで、疲れて帰ってくることが多いです。自宅では、子供が落ち着く環境を作って、心身ともに充電できるようにしましょう。
また、園や学校で疲れてしまった場合、保健室などで休むことができるよう、先生に話しておくとよいです。自分にとって心の安全基地を作っておくことで、子供は安心して外でも活動することができます。

親子幼児

6、HSCをポジティブに!素敵な才能として伸ばしていこう

・HSCに多い「マインズ・アイ」
「マインズ・アイ」とは、「目の前にないものをその場にあるようにリアルに感じる力」のことをいいます。
イメージをリアルに感じることができるので、台風や事故などを少し想像しただけで、強く恐怖を感じることがあります。そのため、ニュースやSNSを見ないようにしている人もいます。
一方で、イメージを自由自在に操作できるので、実際に物がなくても立体的に物を見ることができる力に長けています。楽しいイメージやリラックスするイメージをすることで、心を落ち着けたり、前向きにしたりすることができます。
メリット・デメリットを受け入れながら、できるだけ自分にとってプラスになる方法で「マインズ・アイ」を生かしていくことが理想です。

・HSCをポジティブに生かす「敏感力」
ネガティブな印象を持たれやすいHSCですが、良質な子育てを受けたり、自分にとって良い環境で過ごすことで、幸せに生きていくことができるといわれます。
悪い部分を吸収するだけでなく、良い部分も人一倍吸収する力が強いHSC。
このようなポジティブな側面を「敏感力」と言い、自分の周りの良いことに目を向けて、そこから自分にとってプラスになることを吸収していきましょう。

子供個性

アーロン博士は、「世界は素敵に成長したHSPを必要としている」と言っています。
子供の特性を大切に育てて、自分に自信を持った素敵な大人に育てていきましょう。
HSCの特性でもある、「慎重に考え、人の気持ちに共感できる力」は社会に出てから求められる力ともいえます。
多様性の価値観が広がっている時代、HSCもより自分らしく生きられる世の中になることを願っています。

=参考文献=
子どもの敏感さに困ったら読む本 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/general/20390/#

HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子
https://www.10000nen.com/books/978-4-86626-034-1/